伸子のこころもち、というより考えは、素子からの手紙によって、ふたとおりにも、みとおりにも動かされた。

伸子のこころもち、というより考えは、素子からの手紙によって、ふたとおりにも、みとおりにも動かされた。多計代がモスク※[#濁点付き片仮名ワ、1-7-82]へつくなり、停車場から自分だけ藤原威夫の住居へ行って、一日じゅうそこにとどまっていたということは、伸子に、意外というよりも複雑なニュースだった。何の...

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 その手紙をうけとったのは、クラマールに晩秋の雨がふっている昼だった。

 国際列車が北停車場《セーベルヌイ・ボクザール》のプラットフォームにとまると、背広を着た陸軍少佐の藤原威夫は素子の先にたって、佐々一行の乗っている車室を見つけ、手まわりの荷物の世話をやき、モスクワでは数が少くてつかまえるのに困難なタクシーまで、あらかじめ準備した。こんなあんばいで、わたしのしなければ...

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伸子はモスクワから思いがけない手紙をうけとった。佐々の一行は、予定どおり十月二十七日の朝、モスクワへ到着した。

「こういうものまで持って旅行しているのかな」「これはほんとに気に入っているの。だからペン箱に入れてもっているんです」 小さい美しい一枚の切手を見ている蜂谷の顔は大きく見え、それをのせている手のひらも大きく見えた。「ちょっとみてもきれいでしょう? よく見るともっといいのよ。こまかいところまで、ほ...

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